#27 喫煙の害と禁煙のメリット

成人喫煙率は、2019年の調査によれば16.7%(男性27.1%、女性7.6%)です。この10年間でみると、男女ともに減少傾向にありますが、30~60歳代の男性では、まだ3割を超えています。

 喫煙は、脳卒中や虚血性心疾患などの循環器疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や結核などの呼吸器疾患、2型糖尿病、歯周病など、多くの病気と関係しており、予防できる最大の死亡原因です。喫煙が原因で年間128,900人が亡くなっているという報告もあります。

 たばこの影響は喫煙者本人だけではありません。喫煙している女性が出産した場合、早産や胎児の発育遅延のリスクが高まります。本人が喫煙していなくても、受動喫煙によって、肺がん、虚血性心疾患、脳卒中、乳幼児突然死症候群のリスクが高まります。

 長年たばこを吸っていても、禁煙するのに遅すぎることはありません。30歳までに禁煙すれば、元々喫煙しなかった人と同様の余命が期待できることや、50歳で禁煙しても余命が6年長くなることがわかっています。短期的にみても、24時間後には心臓発作の可能性が少なくなり、数日で味覚や嗅覚が改善し、数ヵ月後には循環機能が改善し、せきや息苦しさが改善し、運動が楽にできるようになります。

 禁煙は、ダイエットなどと同じく、生活習慣の改善です。禁煙のメリットを理解し、「今日から禁煙しよう」と決断し、禁煙を継続します。その間、「また吸いたい」という気持ちをコントロールするための対策も重要です。「吸いたくなったら歯を磨く」など、代わりになる行動を考えておくことや家族にサポートしてもらうこと、禁煙補助薬や禁煙治療用アプリの利用も検討してください。

執筆者

中田由夫(なかたよしお)

筑波大学体育系 教授

主な研究テーマ
食事と運動を中心とした行動変容が生活習慣病の予防および改善に及ぼす影響を明らかにすることを目指しています。
一覧へ