#17 生活習慣病とは?

生活習慣病とは、食事、運動、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が深く関与する疾患の総称です。がんや心臓病、脳卒中などが含まれます。以前は成人病と呼ばれていました。成人病にしても、生活習慣病にしても、医学用語というよりは、行政的に使われている用語です。

成人病については、昭和30年代に、40~60歳くらいの働き盛りに多い疾患として提唱されました。この概念によって、一定の年齢になった段階で、早期発見・早期治療を行うことが効果的との認識が定着し、国民の検診に対する受診行動を推進する上で大きな役割を果たしました。

その後、疾患を予防するためには、成人病の発症に深く関与している生活習慣の改善が必要であり、その認識を定着させ、行動に結びつけていくために、1996年頃、生活習慣病という概念が導入されました。

しかし、疾患の原因のすべてが生活習慣にあるわけではなく、遺伝要因や環境要因など、個人の責任ではない複数の要因が関与しています。生活習慣病という用語は、「病気になったのは個人の責任」という差別や偏見を生むおそれがある点に注意が必要です。

なお、国際的には、非感染性疾患(noncommunicable diseases: NCDs)という用語が広く使われていて、心臓病、脳卒中、がん、糖尿病のほか、慢性閉塞性肺疾患も含まれます。

執筆者

中田由夫(なかたよしお)

筑波大学体育系 教授

主な研究テーマ
食事と運動を中心とした行動変容が生活習慣病の予防および改善に及ぼす影響を明らかにすることを目指しています。
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