#19 たばこの健康影響と改正健康増進法

 たばこの煙にはさまざまな有害物質が含まれているため、たばこの健康影響は甚大です。タールには、10種類以上の発がん物質が含まれており、肺がんをはじめ、さまざまながんにかかる危険性を高めます。ホルムアルデヒドなどの刺激性物質は、気道粘膜を刺激するなどして、慢性肺疾患にかかりやすくします。ニコチンと一酸化炭素は、心臓の動脈硬化を促進し、心疾患にかかりやすくします。また、胃や十二指腸の粘膜を弱め、潰瘍を起こしやすくします。

 喫煙は、周りの人の健康にも影響を与えます。喫煙者が吸い込む主流煙よりも、火のついた部分から立ち上る副流煙の方に、有害物質が2~4倍以上多く含まれるのです。そのため、家庭や職場で、近くにいる人が喫煙し、副流煙を吸ってしまうと、受動喫煙となり、健康影響が生じやすくなります。

 喫煙は、体力の低下にも影響します。呼吸機能の低下、血液の循環機能の低下、筋肉の瞬発力の低下などが引き起こされ、けがからの回復も遅くなると考えられています。

 2020年4月に全面施行された改正健康増進法によって、屋内の原則禁煙、喫煙室の設置、喫煙室への標識の義務付け、20歳未満の喫煙エリアへの立ち入り禁止が盛り込まれました。禁煙に取り組むとともに、望まない受動喫煙をなくす取り組みが重要です。

執筆者

中田由夫(なかたよしお)

筑波大学体育系 教授

主な研究テーマ
食事と運動を中心とした行動変容が生活習慣病の予防および改善に及ぼす影響を明らかにすることを目指しています。
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