#32 良い生活習慣と適正体重の見極め

 「適正体重」というと、体重を減らすことしか思いつかない人が多いかもしれません。しかし、やせ過ぎの人にとっては、「適正体重」に近づけるためには体重を増やす必要があるかもしれません。

 身長と体重から計算できるBMIと死亡率の関係については、低過ぎても高過ぎても死亡率が高くなる「Jカーブ」と呼ばれる曲線関係にあることが知られています。将来の健康を守るためには、太り過ぎの改善だけでなく、やせ過ぎの改善も必要なのです。

 特に若い女性は、芸能人やモデルに対する憧れから、やせ型の体型を目指す傾向があります。このことは世界的に問題視されており、フランスでは、「やせすぎのモデルの活動を禁止する法律」が2015年に可決されています。

 もともとやせ型の人が体重を無理に増やす必要はありませんが、BMI 20を下回るような体型を目指して、無理にやせようとすることは、将来の健康リスクになります。

 重要なことは、どのような体型であれ、栄養バランスのとれた食習慣、定期的な運動習慣、十分な睡眠時間、喫煙しない、飲酒し過ぎない、といった良い生活習慣を維持することです。

 同じやせ型でも、良い生活習慣を維持している人は、やせによる死亡リスクは高くありません。同様に、ぽっちゃり型でも、良い生活習慣を維持している人の死亡リスクは高くありません。

 体重は、簡単にかつ正確に計測できる健康のバロメータです。体重が増えすぎても減り過ぎても、体調に影響があります。他人との比較ではなく、ご自身の感覚が大切です。良い生活習慣を継続しながら、ご自身の適正体重を見極めるようにしましょう。

執筆者

中田由夫(なかたよしお)

筑波大学体育系 教授

主な研究テーマ
食事と運動を中心とした行動変容が生活習慣病の予防および改善に及ぼす影響を明らかにすることを目指しています。
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