#43健康に配慮した飲酒習慣

 2024219日、厚生労働省から「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」が公表されました。このガイドラインの内容を踏まえ、飲酒によるリスクについて解説します。

 飲酒した際、お酒に含まれるアルコールの大半は小腸から吸収され、血液を通じて全身を巡り、肝臓で分解されます。アルコールの分解には、体内の分解酵素が関与しており、体質的にその働きが弱い場合などは、少量の飲酒でも体調が悪くなることがあります。

 日本では分解酵素が弱い人が41%程度いると言われています。そのような人が飲酒を続けると、アルコールが原因で口の中のがんや食道がんなどのリスクが高まる可能性があります。

 高齢になると若い時よりも同じアルコール量でも酔いやすくなり、飲酒量が一定量を超えると認知症の発症リスクが高まります。また、飲酒による転倒・骨折、筋肉の減少のリスクも高まります。

 女性は一般的に、男性よりもアルコールの影響を受けやすいことが知られています。このため、男性よりも少ない量かつ短期間の飲酒で、アルコール関連肝硬変になる場合あります。

 生活習慣病のリスクを高める飲酒量は、1日あたりの平均純アルコール摂取量を男性で40 g、女性で20 g以上と定義されています。純アルコール量は、摂取量(ml)×アルコール濃度(度数/100)×0.8(アルコールの比重)で計算することができます。例えば、5%のビール500 mlの場合、500ml)×0.05×0.820 gとなります。つまり、生活習慣病のリスクを高める飲酒量というのは、1日あたりの平均で、男性ではビール500 ml2本以上、女性では1本以上ということになります。

 1週間のうちに飲酒しない日を設けることによって、1日あたりの飲酒量を少なくすることができます。毎日飲み続けるような飲酒習慣を避け、できれば飲まない、飲むとしても適度にとどめるように配慮しましょう。

執筆者

中田由夫(なかたよしお)

筑波大学体育系 教授

主な研究テーマ
食事と運動を中心とした行動変容が生活習慣病の予防および改善に及ぼす影響を明らかにすることを目指しています。
一覧へ