#55 果物をとるメリットと工夫

2024年度から開始された健康日本21(第三次)の栄養・食生活の目標のひとつとして、「果物摂取量の改善」が挙げられています。バランスの良い食事、野菜摂取量の増加、食塩摂取量の減少と並んで目標に挙げられている背景には、果物摂取が、高血圧、肥満、2型糖尿病などの生活習慣病の発症リスクを下げることにつながることがあります。

果物摂取が健康に役立つ理由として、果物にはカリウムが豊富に含まれていることがあります。カリウムは腎臓でナトリウム(塩分)の排出を促すため、血圧を下げる作用があります。また、果物には水分と食物繊維が豊富で、エネルギー密度が低い(たくさん食べている割にエネルギー量が少ない)ため、満腹感を高め、過食を防止し、肥満を予防する効果があります。食物繊維には血糖値上昇を抑制する作用もあり、糖尿病予防にも役立ちます。

果物摂取量の具体的な目標値としては、1日200 gが設定されていますが、現状値はその半分の99 gと報告されています。果物200 gは、中くらいのりんごなら1個、バナナなら2本、みかんなら2個程度に相当します。食事のデザートとして、あるいは間食として、果物の摂取を心がけてみてください。

ジュースにすると食物繊維が減ってしまうので、生のままで食べるのが理想的です。スーパーやコンビニのカットフルーツを利用するのもよいです。果物を冷凍しておいて、アイス代わりにするのもひとつの方法です。缶詰だとシロップ漬けのものが多いので、糖質の取り過ぎにならないように注意が必要です。果物自体も糖質が含まれるので、食べ過ぎには注意してください。

執筆者

中田由夫(なかたよしお)

筑波大学体育系 教授

主な研究テーマ
食事と運動を中心とした行動変容が生活習慣病の予防および改善に及ぼす影響を明らかにすることを目指しています。
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