#G+【番外編③】運動の習慣化と健康体力の増進

 第1回では「座り過ぎ」の健康リスクについて解説しました。第2回は、どのようにして座位時間を少なくするか、具体的に考えてみました。運動をすることは難しくても、日々の生活の中のちょっとした心がけひとつで、身体活動不足や座り過ぎによる健康リスクは回避できます。

 では、運動の習慣化は必要ないでしょうか?ここで考えたいのが、「体力」の重要性です。体力には、筋力、瞬発力、バランス、柔軟性など、さまざまな要素がありますが、特に健康と強く関連するのが持久性体力です。子どものころにマラソン大会があったりして、嫌な記憶が蘇る・・・という方も少なくないかもしれません。

 しかし、持久性体力を実際に測定して、その十数年後の健康状態を体力レベルによって比較した研究によれば、持久性体力が高い方が、がん死亡リスクが軽減されることが示されています。また、持久性体力を極端に高める必要はなく、同性同年齢の人と同程度、つまり極端に体力が低過ぎなければ、十分に健康利益が得られることが示されています。

 では、体力を高めるためにはどうすればよいでしょうか?1日10分でもよいので、ウォーキングなどの運動を習慣化することが重要です。10分よりも20分、20分よりも30分、運動時間を長くすればするほど、さらに効果は高まりますが、やり過ぎにならないように注意しましょう。

 もうひとつ重要なことは、運動の強度です。例えば、ふたりで歩いたり走ったりしていて、隣の人と話していても息切れしないような運動では、強度が低いです。かといって、話もできないほどきつい運動は、強度が強すぎます。話をしていると息切れは感じるけれども、運動を継続できるくらいの強度がちょうどよいです。

 座り過ぎを減らす、日々の生活のなかでの歩数を増やす、運動を習慣化して体力レベルを高める、この3つが実践できれば、健康寿命が間違いなく伸びますよ!

執筆者

中田由夫(なかたよしお)

筑波大学体育系 教授

主な研究テーマ
食事と運動を中心とした行動変容が生活習慣病の予防および改善に及ぼす影響を明らかにすることを目指しています。
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